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episode3「ラプラスの亡霊」
発売:2011年4月7日 脚本:むとうやすゆき 監督:古橋一浩 絵コンテ:古橋一浩/村田和也/玄馬宣彦 演出:佐藤照雄/遠藤広隆 総作画監督:高橋久美子/玄馬宣彦


 サブタイトル episode3「ラプラスの亡霊」


 ネェル・アーガマ ブリッジ
ミヒロ 「エコーズより入電!」
「"オブジェクトボールはピラミッドスポットに置かれた"……です」
オットー 「達する。フェイズ3発動。これより本艦は、最大戦速で敵警戒宙域に突入。ネオ・ジオン拠点に対し、ハイパー・メガ粒子砲による攻撃を実施する」
「作戦の成否はこの一撃で決まる。全乗組員の奮起を期待する」


 メインタイトル『機動戦士ガンダムUC』


 宇宙
《アイザック》《ガザD》 出撃
《ロト》 出撃
副官 「ナシリ隊、フェイズ2に移行開始」
ダグザ 「よし、私は目標回収ポイントへ向かう」
コンロイ 「バナージ・リンクスの収容が確認され次第、本機はチーム・アルファと共にガンダム奪還の任にあたります」


 ネェル・アーガマ MSデッキ
リディ 「一撃離脱の作戦だ」
「先遣隊がパラオの4つの小惑星を分断したところへ、ハイパー・メガ粒子砲を撃ち込んで軍港を封鎖する。その間にバナージ・リンクスとユニコーンを回収する手はずだ」
ミネバ 「パラオの……軍事施設だけを奇襲するのですよね?」
リディ 「ああ、連邦にだってスパイはいる。居住ブロックに被害を出すような作戦は立てないさ」
「……万一の時は、一人ででも知らせに戻るって顔だな」
ミネバ 「…………」
リディ 「信じてもらうしかない。最接近しているといっても、地球までは2日かかる。水と食糧も最低限しか……」
ミネバ 「覚悟はできています」
ミコット 「どういうこと、少尉さん!」
リディ 「……!」
ミコット 「捕虜を逃がすつもり? その子を、どこへ連れて行くの?」
リディ 「待ってくれ! 詳しいことは話せないが――」
ミネバ 「リディ少尉」
「私たちは、地球へ行きます。少尉は私と行動を共にするだけで、決して連邦を……あなた方を裏切るわけではありません。この状況の中で、私の立場でしかできないことがあると考えました。リディ少尉――」
ミコット 「ジオンのお姫様の言うことなんて、信じられるわけないじゃない!」
ミネバ 「とても大切なことなの。これ以上大きな戦争にしないために、今はこうするしかないんです」
ミコット 「…………」
ミネバ 「ミコットさん」
ミコット 「許したと思わないで」
「貸しにしとくわ。地球でしっかり、あなたの責任を果たしてきて」


 パラオ居住区 集合住宅前
ティクバ 「父ちゃん!」
「急な命令って何!? 帰ってきたばかりなのに何で!」
ギルボア 「大丈夫だ、心配ない。母ちゃんたちを頼むぞ」
ティクバ 「う、うん……」
ジンネマン 「あの小僧が逃げ出したか」
マリーダ 「申し訳ありません」
ジンネマン 「このパラオからは出られんさ」
「だが、そんな度胸があったとはな……」
 パラオ居住区
バナージ 「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」

 ネェル・アーガマ ブリッジ
サーセル 「パラオの連結シャフト部に、爆発の光を観測!」
ヘルム 「まもなく、敵警戒宙域」
オットー 「機関停止、慣性航行始め。全動力を、ハイパー・メガ粒子砲へ」
レイアム 「ミノフスキー粒子、戦闘濃度散布! モビルスーツ隊、発進!」
ミヒロ 「ひっ!」
アルベルト 「こんなのでたらめだぁ!」
ウタルデ 「ハイパー・メガ粒子砲、発射準備よし!」
オットー 「予定ポイント到達と同時に攻撃始め! 射線から離れるよう、味方機に再通達」
ミヒロ 「了解!」
「ブリッジより各機、これよりハイパー・メガ粒子砲を発射する」
ウタルデ 「ポイント到達まで、48…47…46……」

 デルタプラス
ウタルデ(通信) 「45…44…43…42…41…40……」
ミネバ 「…………」
ウタルデ(通信) 「39…38…37…36…35…34……」
《デルタプラス》 起動
 カリクス 工廠付近
兵士 「ライフラインに警告が出たぞ!」
バナージ 「ぁ……」
 ロト
ウタルデ(通信) 「24…23…22…21…20……」
「19…18…17……」
ダグザ 「…………」

 ネェル・アーガマ ブリッジ
ウタルデ 「4…3…2…1……」
オットー 「撃て!」
 ロト
ダグザ 「逃げおおせて来い。迎えに行く!」
 パラオ居住区 集合住宅前
ギルボア夫人 「ティクバ!」
ティクバ 「母ちゃん!」
 ロト
《ジェガン部隊》《ロト部隊》
 VS
《ドライセン》《ギラ・ズール部隊》
副官(通信) 「指定時刻、2分経過」
「目標からの信号、探知できず」
ダグザ 「何をしている、バナージ……」

 カリクス 工廠付近
兵士A 「入り江が塞がれたって、どういうの!?」
兵士B 「大佐との連絡が取れん! 外の様子は!?」
バナージ 「14スペースゲート……あれだ!」
「はっ……! こんなところに……」
「おれを回収しただけじゃ、作戦は終わらない。こんなところにいちゃいけないんだ。おれも……お前も……」

 ネェル・アーガマ ブリッジ
《ジェガン部隊》《スタークジェガン部隊》
《プロト・スタークジェガン部隊》《ロト部隊》
 VS
《ドラッツェ》《ガザD》《ドライセン》
《ギラ・ズール部隊》《ギラ・ズール(親衛隊機)》
《ロト》
 VS
《シナンジュ》《ギラ・ズール(アンジェロ機)》
ミヒロ 「J005(ジュリエット・ファイブ)、レーザー信号途絶!」
サーセル 「後続の敵機多数! 味方が包囲されます!」
オットー 「直掩を増援にまわせ。本艦も直進!」
レイアム 「対空砲火、開け。ダミー隕石放出!」
オットー 「エコーズからの連絡は!?」
ボラード 「通信、途絶中です!」
アルベルト 「はめられたんだぁ! 奴らはこちらの行動を読んでいたんだよ!」
オットー 「…………」
ミヒロ 「艦長!パラオより、新たな通信波探知!」
オットー 「……! エコーズか!」
ミヒロ 「いえ、これは……」
「ガンダム……」

 ユニコーン
バナージ 「大部隊が攻めてきてるんじゃないのか?」
「……ネェル・アーガマが来ている!?」
「はッ!?」
《ユニコーン》
 VS
《ドライセン》
バナージ 「……なにっ!」
「急いでくれ!」
「ぐっ……行かせてくれ! でないと、連邦は退がれないんだ! パラオを戦場にしたいのか、あんたたちは!」
「ぐあああぁぁぁぁッ!」
「なんで!」
「なんで、こうなる……!」

 デルタプラス
リディ 「罠にはまったってのか!」
ミネバ 「行ってください。あなたの務めを果たすべきです」
リディ 「相手は君の軍隊だぞ」
ミネバ 「それは、私の問題です。ご自分の心に従ってください。ここで背を向けたら、多分あなたは一生後悔をすることになります」
リディ 「まいったな……」
「友軍の退却と同時に離脱する!」
「……悪いが、それまでは付き合ってくれ」
ミネバ 「はい」
 同
《デルタプラス》
 VS
《ギラ・ズール》
リディ 「それで言い訳つくだろ! 帰っちまえ!」
《デルタプラス》
 VS
《ドラッツェ部隊》
ミネバ 「……また来ます!」
「……はっ」
「ユニコーンガンダム!?」
リディ 「誰が……」
 ユニコーン
バナージ 「連邦の新型か……?」
ミネバ(通信) 「バナージ! バナージ・リンクスよね!?」
バナージ 「オードリー……? オードリーなのか!?」
 ユニコーン/デルタプラス
ミネバ 「無事なのねバナージ! 私です、ミネバ……オードリー・バーンです」
バナージ 「よかった、無事でいてくれて……」
バナージ(通信) 「どうしてこんなところに……君が操縦しているのか?」
リディ 「君こそ、どうしてガンダムに乗ってる」
リディ(通信) 「エコーズの連中はどうした」
バナージ 「……っ。誰です?」
リディ 「リディ・マーセナス少尉。お守りをキャッチしてくれたよな?」
バナージ 「リディ少尉……」
ミネバ 「バナージ!」
リディ 「彼女は、おれが地球へ運ぶ」
バナージ 「地球へ!?」
ミネバ 「考え抜いて決めたことです」
「少尉のお父様は、連邦中央議会のローナン・マーセナス議員。スペースノイド政策の中枢におられる方です。その人に会って、今回のことを全て話します。ザビ家の血を継ぐ者として、事態を平和裡に解決する方法を……」
バナージ 「ちょっと待ってくれ!」
リディ 「急な話で、混乱するのはわかる。簡単な話じゃないが、最善の方法を探るつもりだ」
ミネバ 「あなたはネェル・アーガマに戻って。あなたとユニコーンが戻れば、連邦は軍を引きます」
《ユニコーン》
 VS
《ギラ・ドーガ》
リディ 「ミネバ……いや、オードリーは責任を持って送り届ける」
リディ(通信) 「このデルタプラスなら、オプションなしでの大気圏突入が可能だ」
バナージ 「オードリー、ひとつだけ教えてくれ」
バナージ(通信) 「それは君がやりたいことなのか?」
ミネバ 「ええ、そうだと思う」
バナージ(通信) 「わかった、リディ少尉……」
「男と見込んだ。オードリーを頼みます!」
リディ 「……!」
「……殺し文句だな」
ミネバ 「えっ」
リディ 「推進剤を使いすぎた。あのマス・ドライバーを利用させてもらう」
ミネバ 「少尉、バナージが――」
リディ 「わかってる、これは男同士の話だ。君は黙っていてくれ」


 ユニコーン
バナージ 「あきらめてくれたのか……?」
「……四枚羽根か!」
「ぐッ……何だ!?」
 クシャトリヤ
マリーダ 「コックピット・コアさえ残っていればいい。機体の確保が最優先……」
「正しい戦争なんてない、か……」
 ユニコーン/クシャトリヤ
《ユニコーン》
 VS
《クシャトリヤ》
バナージ 「……! マリーダさんなんでしょ!?」
マリーダ 「……! なぜ……」
バナージ 「バナージ! バナージ・リンクスです!」
「マリーダさんなら聞いてくれ! ぐはッ……!」
マリーダ(通信) 「投降しろ、バナージ・リンクス。でなければコックピットを焼く」
バナージ 「どうしてあなたが……」
マリーダ(通信) 「誰であろうと関係ない。私もお前も、今はパイロットという戦闘単位にすぎない」
マリーダ 「すぐにメインジェネレーターを切って――」
バナージ(通信) 「それでも!」
バナージ 「それでもあなたはマリーダさんだ!」
バナージ(通信) 「だから感じた、だからわかった……! パラオはあなた達の家なんでしょう!? このユニコーンを取り戻しさえすれば、連邦軍はここを離れるんです!」
マリーダ(通信) 「それは敵の理屈だ……」
バナージ 「オードリーだって来てるんだ! この戦いをやめさせるために!」
マリーダ(通信) 「姫様が? どこにいる!」
バナージ(通信) 「今は戦闘を終わらせることだけ考えてくれ。パラオに住んでる人たちだって、ギルボアさんの家族だって巻き込まれるかも知れない!」
マリーダ 「投降して姫様の居場所を教えれば、我々も軍を退く」
バナージ 「……!」
マリーダ(通信) 「見ろ。戦闘を終わらせたいだけだと言いながら、お前は連邦の立場に立って考えている」
バナージ 「違う、違うよマリーダさん……あなたたちは直線的すぎるんだ!」
「だからオードリーは『箱』を渡せないって――」
マリーダ 「敵の理屈だと言っている!」
バナージ 「この……」
「分からずや!」
【《ユニコーン》 NT-D発動】
マリーダ 「くっ……ガンダム!」

 レウルーラ ブリッジ
オペレーター 「NT-D発動確認。クシャトリヤとの交戦に入りました」
フロンタル 「サイコ・モニターの受信状況によっては、パラオの陰から出る。敵艦への警戒も怠るな」
アンジェロ 「強化人間に似合いの仕事か……」
ジンネマン 「なぜマリーダを孤立させるんです」
フロンタル 「これは中尉にしかできない仕事だ」
「NT-Dを発動させるには、ニュータイプと思われる者をぶつけるしかない。ユニコーンガンダムにはサイコ・モニターを取り付けた。NT-Dの発動によって開示される『箱』のデータを傍受する。ラプラス・プログラムの解析ができない以上、順当にシステムの封印を解いていくのが早道だ。そのために、連邦の内通者を利用してあのバナージという少年をユニコーンに導きもした。キャプテンに伝えずにいたことはすまないと思っている」
ジンネマン 「しかしマリーダは……!」
フロンタル 「わかっている」
「強化人間は、純然たるニュータイプとは言えん。だがなキャプテン、純然たるニュータイプとは何だ? 答えられる者はいない。いま必要なのは、NT-Dを発動させる"現象"だ。あのガンダムはまだ本当の姿を見せていない。マリーダ中尉には、奴の本性を引き出してもらう」
ジンネマン 「…………」

 クシャトリヤ
《ユニコーンガンダム》
 VS
《クシャトリヤ》
マリーダ 「……ファンネル!」
【サイコミュ・ジャック発動】
マリーダ 「……!」
「……ファンネル!!」
「はっ……」
「私がわからないのか!?」
「お前は……誰だ……」

 レウルーラ ブリッジ
ジンネマン 「あれが、あの小僧のやっていることなのか……」
フロンタル 「正確には違う」
「パイロットはもはや、受信した感応波を敵意に変換する処理装置だ」
ジンネマン 「では、あのガンダムを動かしているのは……」
フロンタル 「NT-Dだよ」
「ニュータイプ・デストロイヤー・システム。敵をニュータイプと識別すると、機体のリミッターが解除される。サイコフレームによる超常的なインターフェイスと、敵のサイコミュ兵器を支配する力を兼ね備えたハンティング・マシーン」
ジンネマン 「そんな機体、並みの人間に扱えるはずが……」
フロンタル 「その通りだ」
「そこには、言葉通りの強化人間が必要になる。技術の産物に駆逐された時、ニュータイプは完全に葬り去られる。宇宙世紀百年の節目に、"UC計画"とはよく言ったものだ」
 クシャトリヤ
マリーダ 「ぐッ!」
 レウルーラ MSデッキ
ジンネマン 「つまりマリーダは、噛ませ犬ってわけですか」
フロンタル 「プルトゥエルブ……それが彼女の名だ」
「クローンニングと遺伝子改造によって造り出された、人工のニュータイプ。12番目の試作品」
ジンネマン 「…………」

 ユニコーン/クシャトリヤ
マリーダ 「がはッ! うッ……ぐッ……!」
バナージ 「はッ……!」
 マリーダ
少女の声 「マスター、死んじゃったの? なんで!?」
「どうすればいいの、マスター!」
女性の声 「臭い子だねぇ」
男性の声 「こんな子ども、どうするんだ……」
女性の声 「そういう趣味の客ってのもいるんだろ。今日からお前のマスターは私だよ」
男性の声 「まだ若いのに……」
女性の声 「もう重石は取れたんだろ! 来るんだよ!」
「ちょっとあんた、軍って何だい。ジオンの落ち武者だったら警察に……ひっ!?」
ジンネマンの声 「もういい……すまなかった」
 ユニコーン/クシャトリヤ
バナージ 「…………」
バナージ(感応) 「こんな……こんなの哀しすぎます……」
マリーダ(感応) 「優しさだけでは人は救えない……」
バナージ(感応) 「罪も汚れも消せないから……」
「それでも……」
マリーダ(感応) 「それでも……」


 ロト
ダグザ 「了解した」
「拿捕した機体の検分には、我々も立ち会いたい。終わり」
コンロイ 「あの四枚羽根……意図的に孤立させられていたように見えましたが……。爆弾が仕掛けてあるなんて冗談は、願い下げにしてもらいたいもんです」
ダグザ 「ネェル・アーガマ一隻沈めるのに、そんな搦め手が必要とも思えん。しかし、あの少年が泳がされた可能性はある」
コンロイ 「骨折り損とは、思いたくありません」
ダグザ 「当然だ」

 ネェル・アーガマ MSデッキ
艦内放送 「収容、完了する」
ミコット 「バナージ……」

 デルタプラス
リディ 「終わったみたいだ」
「ガンダムはネェル・アーガマに収容されたらしい。あの四枚羽根もな。こっちは多分、戦没認定を食らってるだろう。今は、このまま進むしかない。君も、おれも……」


 ネェル・アーガマ MSデッキ
アーロン 「NZ-666 クシャトリヤ」
「型式番号からして、ネオ・ジオン原産でしょう。コックピット周りにサイコフレームを実装してますが、古いタイプですね。シャアの反乱の際に、アナハイムから提供された試作品を流用したのでしょう」
オットー 「…………」
アーロン 「オットー艦長?」
オットー 「お? あ、あぁ」
「サイコフレームの製造設備は、月のグラナダにしかないと言ったな」
アーロン 「ええ、表向きは開発が中止された技術ですから、機密保持も含めて一括管理されています」
オットー 「なぜ中止されたんだ?」
アーロン 「未知の領域が大きすぎるからだと聞いています」
「ユニコーンにしても、NT-D発動時に装甲から露出したサイコフレームが発光しているように見えますよね? あれ、なんで光ってるのか造った我々にもわからんのです。しかもそれは時に物理的なエネルギーにも転化し得る……あぁっ、戦闘記録は観ていませんが……一方的な戦い方だったんじゃないですか?」
レイアム 「艦長!」
オットー 「ん?」
レイアム 「医務室からです。捕虜のバイタル、安定しました」
「外傷はともかく、かなり衰弱しているようで、まだ尋問には……」
オットー 「この、全身にある火傷や裂傷の跡というのは何だ?」
レイアム 「……ハサン先生の話では、女性としての機能も……」
オットー 「……っ」
レイアム 「第一次ネオ・ジオン戦争末期に、クローンのニュータイプ部隊が実戦投入され全滅したらしいとのことでしたが……」
オットー 「生き残った者もいた……。その末路がこれか……」
「尋問は参謀本部に任せよう」
レイアム 「了解です」
オットー 「……お?」
アルベルト 「おと、おっととととと……! よっ、よっと……」
レイアム 「もうこれ以上の寄り道は……」
オットー 「ない! ……と思いたいな」


 ネェル・アーガマ 医務室
ハサン 「必要とは思えんがね」
ミヒロ 「相手は強化人間なんでしょう!? 薬が切れたら、暴れ出すんじゃないですか?」
ハサン 「彼女は先天的に遺伝子設計をされたタイプだから、拒否反応を抑える必要はない」
ミヒロ 「でも!」
ハサン 「情緒も安定しとるようだし、何より怪我がひどい。拘束衣を着せることには医者として同意できんな」
ミヒロ 「だって、ネオ・ジオンなんですよ!? 先生にも何をするか――」
バナージ 「マリーダさんはそんなことしません!」
ミヒロ 「バナージ君……いたの」
ハサン 「気分はどうだ?」
バナージ 「怪我してる人に、拘束衣なんて……」
ミヒロ 「あなたが口出しすることではないわ」
バナージ 「なんでです。マリーダさんは士官なんですよ? 捕虜の扱いって、ルールで決められてるんじゃないんですか?」
ミヒロ 「"袖付き"はテロリストよ。士官であろうと犯罪者だわ」
バナージ 「でも、あの人は……」
ミヒロ 「あなた、パラオで洗脳でもされたの? 彼女はあの四枚羽根のパイロットよ? あなたのコロニーを破壊した張本人なのよ!? 私たちの仲間だって、何人殺されたか……」
バナージ 「…………」
「でも、そんな風に頭から決め付けてしまったら……」
ミヒロ 「警衛をつけます。移動させる時は連絡してください」
ハサン 「了解」
バナージ 「…………」
 同
ハサン 「察してやれ。リディ少尉まで帰ってこなかったんだからな」
バナージ 「何なんです? 強化人間って」
ハサン 「妄想の産物だよ。人工的にニュータイプは造れないか、ってな。つまるところ、倫理をおかして類人兵器を造り出すための詭弁だった」
バナージ 「…………」
ハサン 「ニュータイプの概論は?」
バナージ 「はい。宇宙に出た人類は誤解なく分かり合えるようになるって……」
ハサン 「そうだ」
バナージ 「みんながそうなれば……戦争なんて無くなりそうなものなのに」
ハサン 「昔ある男が言っていた」
「人の争いが絶えないのは、人類が進化の入り口で足踏みをしているからだ。本当にニュータイプになれる可能性があるなら、強化人間の研究は容認されていい。人の進化を自然にゆだねていたら、人類はその前に自分で自分を殺してしまう……」
バナージ 「寂しいものの見方だと思います……」
ハサン 「同感だ。だからたとえ不便でも、今ある力で分かり合う努力をせにゃならん」
バナージ 「…………」
 同
マリーダ 「立場が逆転したな」
バナージ 「……!」
マリーダ 「そんなに見るな」
バナージ 「よく憶えてないんです。どうしてあんなことになったのか……」
マリーダ 「マシーンに呑まれたんだろう。サイコミュの逆流だ。操縦しているつもりが、いつの間にか操られている」
バナージ 「……っ」
マリーダ 「強烈な否定の意志を感じた。あれはガンダムに埋め込まれたシステムの本能だろう。ニュータイプを見つけ出して破壊する。たとえそれが造り物であっても……」
「マシーンには本物と造り物を識別する能力はない。でも人は違う。感じることができるから」
バナージ 「あなただって……!」
マリーダ 「私にはマスターがいる。たとえ造り物だとしても、私は私の全存在にかけて尽くす。マスターが望むことを望み、マスターが敵とするものと戦う」
バナージ 「……でも、それは呪いだよ。そんな風に自分で自分を殺し続けるなんて……」
マリーダ 「お前の中を見た」
バナージ 「……!」
マリーダ 「お前も私と同類なのかも知れない」
バナージ 「どういう意味ですか……」
マリーダ 「そうとでも思わなければ、私の立場がないよ」
「だがガンダムは止まった。お前の意志が……お前の中にある根っこがシステムを屈服させたんだ」
バナージ 「根っこ……?」
マリーダ 「私たちにはそれがない。だからマシーンと同化できてしまう」
バナージ 「マリーダさ――」
マリーダ 「私のことはいい」
「バナージ、たとえどんな現実を突きつけられようと、それでも……言い続けろ。自分を……見失うな。それがお前の根っこ……」
「あのガンダムの中に眠る、もうひとつのシステムを……呼び覚ます……力、に……! あれに『ラプラスの箱』が託されたのは……うぅッ…ぐっ……!」
バナージ 「マリーダさん! マリーダさん!!」
ハサン 「どうした!」
マリーダ 「ぐッ…うぅッ……あぁっ……ぐッ……!」


 ネェル・アーガマ 艦内通路
ハロ 「バナージ ゲンキナイナ」
バナージ 「……!」

 ネェル・アーガマ 展望室
タクヤ 「ジオンのお姫様が消えたこと、艦長たちだけの秘密になってるらしい。ミヒロ少尉に、リディ少尉が生きてるってことだけでも教えてやれりゃあな」
バナージ 「そういう関係だったんだ……」
ハロ 「カンケイ カンケイ」
タクヤ 「よくわかんねーけど!」
ミコット 「ちゃんと地球に着けたかしら……」
バナージ 「あの人が一緒なんだから、平気だよ」
ミコット 「……なんか、バナージじゃないみたい」
バナージ 「……えっ」
ミコット 「そんな風に思いきれるなんてさ」


 宇宙
《デルタプラス》 大気圏突入

 マーセナス邸 廊下
ドワイヨン 「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
「失礼いたします!」
 マーセナス邸 執務室
ドワイヨン 「旦那様、たったいま軍から緊急連絡がございました」
「リディお坊ちゃまが……」
ローナン 「…………」

 レウルーラ ブリッジ
アンジェロ 「ミネバ様が、地球に降りられた?」
士官 「連邦政府内のシンパからの情報です。議員特権で防衛ラインをすり抜けたモビルスーツがあったと。おそらくは、それに……」
アンジェロ 「陽動ではないのか」
フロンタル 「木馬もどきの位置は?」
ヒル 「静止衛星軌道に差し掛かるところです」
フロンタル 「やはりな。指定座標に向かうか……」
アンジェロ 「…………」
フロンタル 「今度はハズレということはあるまい」
「ラプラスの封印を解くには、出来すぎの場所だ 」

 ガランシェール ブリッジ
ジンネマン 「クリムト……。ビスト財団が美術品の移送に使っているシャトルか……」
フラスト 「加速もせんと地球軌道上で遊覧飛行を決め込んでいます」
ギルボア 「誰かと待ち合わせをしている、とすれば相手は……」
ジンネマン 「目的が何であれ、軌道上でランデブーする気でいるなら隙が生まれるな」
ギルボア 「仕掛けてみますか?」
フラスト 「大気圏すれすれだぜ? やれるのかよ」
ギルボア 「やってみるさ。『ラプラスの箱』はともかく、マリーダを木馬もどきに預けとくわけにはいかんでしょう」
「フラスト、操縦を頼む!」
フラスト 「ちょ、ちょ……!」
「いいんですか? キャプテン」
ジンネマン 「……そうだな」


 ネェル・アーガマ 第二通信室
アルベルト 「ネェル・アーガマは座標宙域にて調査活動を行います」
「ユニコーンがルナツーへ搬入される前に、『ラプラスの箱』の鍵に関する情報は……」
マーサ(通信) 「顔色が冴えないわね。何か問題が?」
アルベルト 「あ、いえ……」
「ただ、度重なる戦闘で彼らも疲れきっています。その……これについては別の部隊に任せられなかったものかと……」
マーサ(通信) 「情が移ったとでも言いたそうな顔ね?」
アルベルト 「……!」
マーサ(通信) 「地球に降りたら、しばらく休むといいわ」
アルベルト 「地球に……?」
マーサ(通信) 「輸送船をチャーターしました。ネェル・アーガマが捕虜にしている強化人間を、北米のオーガスタへ運んでもらいます」
アルベルト 「オーガスタ……はッ……!」
マーサ(通信) 「そう。研究所は閉鎖されたけど、再調整に必要な設備は残っているとか」
アルベルト 「何をするつもりなんです」
マーサ(通信) 「お祖父様が素直に『箱』の在り処を教えてくだされば、こんな搦め手は使わずに済む」
アルベルト 「…………」
マーサ(通信) 「お祖父様とカーディアスにどんな目的があったのか知らないけど『箱』が失われれば財団の繁栄も失われる。連邦政府の中には、それを見越して独自に『箱』を手に入れようとする動きもあるわ。つまらない同情心にとらわれている時ではなくってよ?」
「『ラプラスの箱』こそが、私たちの命綱。頼んだわよ、アルベルト」



 ネェル・アーガマ 艦長室
バナージ 「嫌ですよ!」
ダグザ 「頼んでいるつもりはない」
「ラプラス・プログラムが指定する座標宙域でユニコーンを稼動させれば、新たにプログラムの封印が解ける可能性が高い。私が同乗する。君には、当該座標まで機体を運んでもらいたい。これは命令だ」
バナージ 「見たでしょう!? パラオであれが、どうなったか……」
オットー 「…………」
バナージ 「おれは軍人じゃないんだから、命令を聞く必要はないはずです」
ダグザ 「確かに義務はない。だが責任はある」
「君はもう、三度も戦闘状況に介入した。強力な武器を持ってだ。それで救われた者もいれば……命を絶たれた者もいる」
バナージ 「…………」
ダグザ 「敵味方に関わりなく、君は既に大勢の人間の運命に介在しているんだ。その責任は取る必要がある」
バナージ 「どうやって……」
ダグザ 「やり遂げることだ」
バナージ 「死ぬまで戦えってことですか? それとも、この訳のわからない宝探しに最後まで――」
ダグザ 「それは自分で考えろ。いまの君は、目の前の困難から逃げようとしているだけだ」
バナージ 「だって、人が死ぬんですよ!? 人殺しをしなきゃいけない責任って何です? おれにはそんな簡単に、割り切れません!」
「……くッ」
オットー 「そう嫌うな。ああ言うしかないのが、彼らの立場だ」
 ネェル・アーガマ 艦内通路
コンロイ 「どうしたんです? 隊長」
ダグザ 「いや、自分に息子でもいれば、とうに味わっていた気分なのかと思ってな」


 ネェル・アーガマ ブリッジ
オットー 「こんなに近づいたのは、小学校の史跡見学以来だよ」
レイアム 「『ラプラスの箱』と聞いて、最初に思い出すのがこれではありますが……」
オットー 「緯度0、経度0、高度200キロメートル……首相官邸ラプラスの残骸は、日に一度必ずそこを通る。ま……灯台下暗しなんて話でもないだろうが――」
アルベルト 「私の時は、もう見学コースから外れていたな」
「艦長、副長……世話になった」
オットー 「こちらこそ、などとおためごかしは言わんよ。あんたのせいで酷い目にあった。その顔は当分忘れられそうにない」
アルベルト 「調査に立ち会えないのは心苦しいが……。艦の武運長久をお祈りする。それでは」
レイアム 「妙ですね。あれほど『箱』にこだわっていたのに」
オットー 「ふんっ、彼もしょせんは宮仕えだ。調査の結果は参謀本部経由でアナハイムにも伝わる」
レイアム 「それだけでしょうか?」
オットー 「ん?」
レイアム 「民間の船に捕虜の移送を任せるなんて、普通じゃありません。本部がそれを認めるなんて……彼女をどうするつもりなんでしょう?」
オットー 「ルナツーには強化人間をケアする施設がないというのが、表向きの理由だがな……ん?」
ミヒロ 「RX-0、 発艦」
オットー 「乗る気になってくれたか……」
レイアム 「えっ?」
 ユニコーン
ミヒロ(通信) 「現在ネェル・アーガマは地球低軌道上に位置しています」
「基本は空間機動と変わらないけど、常に規定の速度を維持しておかないとあっという間に重力に引っ張られるから……気をつけて」
バナージ 「はい」
 バナージ
オットー(回想) 「パラオに単艦で攻め込めと言われた時、正直、我々はもうクサっていた。だがな、ダグザ中佐が言ったんだよ。これは人質救出作戦だ。我々は君に借りがある……てな」

 ユニコーン
ダグザ 「何だ」
バナージ 「いえ……」
「ダグザさんは、迷ったりすることってないんですか?」
ダグザ 「俺は連邦という巨大な装置の部品……歯車だ。与えられた役割を果たすだけだ」
バナージ 「おれは何一つ確信を持てない。敵と味方の区別だって……。そんな人間に武器を手にする資格なんてないでしょう。二度とこいつには乗りたくなかった」
バナージ(心の声) (たとえあの人に失望されたとしても……)
ダグザ 「こう考えればいい」
「責任を取らなければならない相手が、君の傍らにはいる」
バナージ 「タクヤとミコットのことですか?」
ダグザ 「ルナツーに戻ったあと、あの二人の処遇は我々の報告次第ということになる。それを左右するのが、君の行動というわけだ」
バナージ 「また人質ですか……」
ダグザ 「捉え方は自由だ。君は彼らの運命を変えられる立場にある。その意味では、君はいま、正しい選択をしている」
バナージ 「…………」

 ガランシェール ブリッジ
アレク 「さらに射出を確認」
「先に発進した機体と、ランデブー軌道に乗る模様」
ジンネマン 「例のガンダムか」
アレク 「確認できず。サイコ・モニターに反応なし」
ジンネマン 「一本角の状態ではトレースは無理か……」
「財団の船の動きは?」
アレク 「接触コースに乗っています。木馬もどきがこのまま周回速度まで減速するとして……接触予想時刻は約10分後。赤道直上360キロ、東経15度28分」
 ギラ・ズール
ジンネマン(通信) 「聞いての通りだ」
「ランデブーのついでに、指定座標を調べるってのが連中の腹積もりらしい。モビルスーツがラプラスの残骸の方に出払った時がチャンスだ」
ギルボア 「了解です」
「ようやくガランシェール隊らしい仕事ができるってもんだ」
ジンネマン(通信) 「おかしな色気は出すなよ。ティクバたちも待ってるんだからな」
ギルボア 「わかってます。マリーダは必ず連れて帰ります」
 ガランシェール ブリッジ
ジンネマン 「……頼む」

 ユニコーン
ダグザ 「ラプラスプログラムは、機体の位置座標を認識して、データを開示している可能性がある。前回のNT-D発動の際には新しい情報を示さなかった」
「ラプラスの残骸は、毎日午前零時ジャストにその座標を通過する」
バナージ 「大昔にテロで壊された首相官邸……こんなわかりやすい場所に『箱』が隠されているっていうんなら、もうとっくに誰かが調べに来ているんじゃないですか?」
ダグザ 「わからんから調べている」
「操縦に集中しろ。接触のチャンスは一度しかない」
バナージ 「……っ」
「…………ふぅっ」
ダグザ 「コンロイ、些細なことでもいい。何か変化があったら報告しろ」
コンロイ 「了解」
 ネェル・アーガマ ブリッジ
ミヒロ 「指定座標到達まで、2分」
 ユニコーン
ダグザ 「限界に達したこの星を救うには、大規模な宇宙移民が必須だった。そして、そのためには神にも等しい力を持った組織が必要とされた」
バナージ 「それが連邦政府……」
ダグザ 「逆らう者は容赦なくねじ伏せる、無慈悲な神」
「首相官邸の爆破は連邦政府にとっては都合のいい事件だった。テロ防止を名目にその権能を維持することが許されたのだからな」
バナージ 「連邦が自作自演のテロを仕掛けたみたいな言い方ですね」
ダグザ 「大人の世界では、時としてそういうことが起きる」
「当事者などもう一人も生きてはいまい。生き残っているのは、『箱』を畏れよというしきたりと、その上で保たれてきたビスト財団との共生関係だ」
バナージ 「しきたり……」
ダグザ 「個人の力では変えられないし、変えようとする気すら起こさせない。どんな組織でも起こることだ。が、かと言って維持存続の本能に呑み込まれた歯車を悪と断ずることもできない」
「『箱』は百年の間、ただそこにあり続けさえすればよかった」

 ネェル・アーガマ ブリッジ
ミヒロ 「指定座標到達まで、あと15秒」
「12…11…10……」
「9…8…7…6…5…4…3…2…1……」
「ただいまゼロポイントに到達。指定座標を通過」
 ユニコーン
ダグザ 「機体のシステムは正常」
「……どうだ?」
バナージ 「どうって、何も」
ダグザ 「外観に変化は?」
コンロイ(通信) 「異常なし。ユニコーンにもラプラスの残骸にも変化ありません」
音声 (地球と……宇宙に住むすべての皆さん……こんにちは……)
バナージ 「はっ……!」
ダグザ 「どこからだ」
コンロイ(通信) 「何です、これは!」
ダグザ 「わからん。そっちで発信源を特定できないか」
ミヒロ(通信) 「RX-0から通信波が発しています。そちらの状況を知らせてください」
ダグザ 「ここからだと?」
 ネェル・アーガマ ブリッジ
コンロイ 「間違いありません!」
 ユニコーン
音声 (この記念すべき瞬間に、地球連邦初代首相としてみなさんに語りかけることができる……)
バナージ 「…………」

 ネェル・アーガマ 艦内通路
アルベルト 「発信源はユニコーンだと!? ラプラスの残骸に接触して封印が解けたのか? NT-Dはどうなっている!?」
部下 「発動は観測されていないとのことです」
「どうします? 出発を延期して調査を見届けますか?」
アルベルト 「状況によっては出発時刻の変更もありうると、クリムトに伝えろ」
マリーダ 「マス……ター……?」

 ネェル・アーガマ ブリッジ
オットー 「ミノフスキー粒子だと?」
サーセル 「濃度、急速に上昇中。散布源の方位、確認できず。拡散パターンが定常化しません」
オットー 「対空戦闘用意! 総員ノーマルスーツ着用! 付近の民間船に敵が紛れ込んでいる可能性がある! 対空監視を厳となせ!」
レイアム 「仮にも地球の絶対防衛圏内です。偽装しているにしても、艦隊規模に戦力が侵入できたとは……」
オットー 「それが問題だ。小戦力で仕掛けてくるには、それなりの策がある敵ということになる!」
レイアム 「…………」
オットー 「……ん? む、むぅ……」
音声 (我々ひとりひとりの意識改革が不可欠だったのです……)
 ユニコーン
音声 (一国家、一民族に帰属する"我"では……)
バナージ 「……はっ!?」
 ロト
コンロイ 「……!隊長!」
 ユニコーン
ダグザ 「バナージ!?」
バナージ 「何かが来ます! ネェル・アーガマが狙われている」
 ネェル・アーガマ ブリッジ
オットー 「調査隊を呼び戻せ! エコーズのロトも砲台代わりになるはずだ」
ミヒロ 「はっ、ユニコーンは?」
オットー 「訳のわからん演説を垂れ流しているんだ。敵の的になる前に避難させろ!」
ミヒロ 「了解」
「ブリッジより、モビルスーツ隊各機。ただちに現状任務を放棄し母艦へ帰投せよ」
 ユニコーン
ダグザ 「お前……」
バナージ 「いた!」
ダグザ 「数はわかるか!?」
バナージ 「ひとつ……いえ、その後ろに別働隊がいます」
ダグザ 「ぬッ……!」

 ガランシェール ブリッジ
《ジェガン(エコーズ機)》
 VS
《ギラ・ズール(親衛隊機)》
ギルボア(通信) 「敵部隊、ラプラスの残骸付近で足止めを食っています」
ジンネマン 「よし、ギルボア。引き際を見誤るなよ」
ギルボア(通信) 「……了解」
ジンネマン 「気をつけろ、ガンダムの動きが思ったより早い。奴だけラプラスの残骸から離脱したようだ」
 ギラ・ズール
ギルボア 「勘の良さそうなガキでしたからね」
 ガランシェール ブリッジ
フラスト 「しかし気味が悪いな。まさかこの演説が流れておしまいってんじゃないでしょうね?」
ジンネマン 「まだNT−Dは発動していない。この先に隠された何かが……」
クルー(通信) 「レーザー信号受信!」
ジンネマン 「レウルーラからか?」
クルー(通信) 「いえ、違います。これは……」
ジンネマン 「フル・フロンタル……もうお出ましか」

 ユニコーン
《ユニコーン》
 VS
《ギラ・ズール(親衛隊機)》
ダグザ 「ビーム・マグナムを使え。この距離なら狙える」
バナージ 「ダメです。あれは強力すぎる」
ダグザ 「手加減できる状況か!」
バナージ 「接近すれば!」
 同
ダグザ 「遊んでいるつもりか、貴様! 敵は墜とせる時に墜とせ! お前が見逃した敵が、味方を……お前自身を殺すかもしれんのだぞ!」
バナージ 「遊びなもんか! 自分が死ぬのも、人が死ぬのも冗談じゃないって思うから、やれることをやってるんでしょう!」
 同
ギルボア(通信) 「退がっていろバナージ!」
バナージ 「……! ギルボアさん!」
ギルボア(通信) 「艦は沈めない。俺たちの目的は、マリーダの奪還だ」
バナージ 「そんな……どうやって」
ギルボア(通信) 「いいな、退がっているんだぞ。こんなところで死ぬことはない」
バナージ 「ギルボアさん! 待って!」
ダグザ 「捕虜の奪還だと!?」
「RX-0よりR010(ロメオ・テン)、中継頼む。敵の目的は捕虜の奪還と推測される」
「……新手か」
バナージ 「赤い彗星……」

 シナンジュ
フロンタル 「木馬もどきはガランシェール隊に任せておけばいい。我々はユニコーンに仕掛けてNT-Dの発動を促す」
アンジェロ専用ギラ・ズール
アンジェロ 「はっ!」
フロンタル(通信) 「遠慮はするな。墜とす気でかからないとガンダムには勝てんぞ」
アンジェロ 「親衛隊、露払いをさせていただきます!」
《シナンジュ》
《ギラ・ズール(アンジェロ機)》
《ギラ・ズール(親衛隊機)》
 VS
《ユニコーン》
アンジェロ 「馬鹿にして……! いまさらそんな態度が通用するものかよ!」
「さっさとガンダムになってみせろ!」
 ユニコーン
ダグザ 「応戦しろ! ちゃんと狙え!」
ユニコーン 「狙ってます!」

 ネェル・アーガマ ブリッジ
オットー 「調査隊はまだか!?」
ミヒロ 「ロトの牽引に手間取った模様! 到着まで、あと5分!」

 ネェル・アーガマ/クリムト 艦内通路
一同 「うおぉ、うゎっ……」
アルベルト 「ダメだ、シャトルの発進を延期させろ! 安全な場所に退避するんだ!」
部下 「もう戦闘は始まってます! この艦から……!」
アルベルト 「……ぬっ? おい、捕虜が!」
「……はっ」
一同 「うおおおぉわっ……!」
アルベルト 「うわあぁぁ――!」
「くっ……」
「ひいぃぃ! うわぁっ、くッ……!」
マリーダ 「…………」

 ユニコーン
ダグザ 「本気で戦え、バナージ。奴と向き合えば、NT-Dが発動するはずだ。このままではなぶり殺しにされるぞ」
バナージ 「で……でも本気で動いたらダグザさんが……」
ダグザ 「補助席がもろい分、身体は頑丈だ」
バナージ 「いっそのこと、この機体を渡してしまえば……」
ダグザ 「ユニコーンが無くなったら、ネェル・アーガマはどうなる」
「連中は戦争のプロだ。捕虜を取り戻したら、墜とせる敵を見逃したりしない。艦にはお前の友達だって……」
バナージ 「わかってます……わかってますよ! わかってるけど……おれは……!」
「くッ……ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
ダグザ 「ハッチを開けろ」
バナージ 「えっ?」
ダグザ 「急げ!」
バナージ 「何をするんです!?」
ダグザ 「これで戦えるだろ」
バナージ 「違う……違うんですよ」
「そういうことじゃなくて、おれは――」
ダグザ 「バナージ。俺はさっきNT-Dが発動しかけるのを見た。あれはお前自身に反応しているように見えた。このラプラスの亡霊の声を聞いて、何かを感じたお前の心にだ」
バナージ 「心……」
ダグザ 「ジオン根絶のための殺戮マシーンなどではない。それとは違う何かが、このユニコーンには組み込まれている。それを制御するのは多分……生身の心だ。それがラプラス・プログラムの正体なのかも知れん。乗り手の心を試しながら、『箱』へと導く道標。こいつを造った奴は、とんだ食わせ者らしいな」
バナージ 「それは……」
ダグザ 「今は時間がない。俺が外に出たら、お前は奥に移動して合図を待て」
バナージ 「何をする気なんです?」
ダグザ 「歯車には歯車の意地がある」
「お前もお前の役割を果たせ」
バナージ 「おれの……」
ダグザ 「ここが知っている」
「自分で自分を決められる、たったひとつの部品だ。なくすなよ」
バナージ 「果たすべき……責任……」
 ネェル・アーガマ ブリッジ
《ジェガン(エコーズ機)部隊》《リゼル部隊》
 VS
《ギラ・ズール(親衛隊機)》
音声 (……そして、祈りを捧げてください……)
オットー 「ふぅ……あとはユニコーンだな」

 ユニコーン/ラプラス史跡
音声 (宇宙に出た人類の先行きが安らかであることを……)
ダグザ 「意地でも、借りでもない。自分の心に従っただけだ……」
「歯車にも生まれるのだな。望みというものが……」
音声 (可能性という名の、神を信じて……)
バナージ 「……来た!」
ダグザ(通信) 「バルカンだ! 威嚇でいい、撃て!」
《シナンジュ》
 VS
ダグザ・マックール中佐
ダグザ 「今だ!」
「バナージ!」
バナージ 「ダ、グ……!」
ダグザの声 (お前は私の希望……)
(託したぞ、バナージ……)
バナージ 「……やったな!!」
【《ユニコーン》 NT-D発動】

 アンジェロ専用ギラ・ズール
《ユニコーンガンダム》
 VS
《シナンジュ》
アンジェロ 「大佐!」
「……ガンダムになってくれた!」
「キュアロン、手はず通りだ!」
「所詮は素人だ……シミュレーションで予測した通りに動いてくれる……!」
「このまま挟み込むぞ! ……コックピット以外は潰してもいい……やれ!」
《ユニコーンガンダム》
 VS
《ギラ・ズール(親衛隊機)》
アンジェロ 「誘い込まれた……!?」
フロンタル(通信) 「アンジェロ、逃げろ。奴は普通じゃない。離れろ!」
《ユニコーンガンダム》
 VS
《ギラ・ズール(アンジェロ機)》
アンジェロ 「化け物め……うッ!?」
《ユニコーンガンダム》
 VS
《シナンジュ》
アンジェロ 「大佐ぁ! 離脱してください! あなたがこんなことで……!」


 ガランシェール ブリッジ
フラスト 「シナンジュ、レーザー通信ロスト。瓦礫に紛れて判別できない」
ジンネマン 「ガンダムは?」
フラスト 「サイコ・モニターは健在です」
ジンネマン 「そちらを追えば補足できる。ただちに転進、軌道変更。重力の井戸に引きずり込まれる前に2機を回収する」
フラスト 「俺の操縦で、ですか?」
ギルボア(通信) 「大気アシスト航法だ! フラスト、なんとかなる」
ジンネマン 「ギルボア、タイムアップだ」
「この状態では木馬もどきに侵入することはできん」
ギルボア(通信) 「しかし……これを逃したら……」
ジンネマン 「作戦中止だ。ギルボア隊はフロンタル隊の救援に当たれ」

 ユニコーン/シナンジュ
バナージ 「あんただけは……墜とす!」
フロンタル 「バナージ君! 聞こえているならやめろ!」
フロンタル(通信) 「このままではお互い大気圏で燃え尽きることになる!」
バナージ 「……くッ」
「今度は外さない……!」
ギルボア(通信) 「バナージ……!」
ギルボアの声 (ティクバ……家族を……頼む……)
バナージ 「ギルボア……さん……?」
.
《ユニコーンガンダム》 大気圏突入


 エンドロール 主題歌:merry-go-round


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